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時は過ぎて窓の外に映るのが紅く色づいた葉ではなく、白い雪になった頃。病院を退院して、家での療養に変えた文羽の元へ麻樹がくる。この頃、頭をあげることも出来なくなっていた文羽は麻樹に合鍵を渡していた。
「文羽、来たよ。起きてる?」
「……なんとか」
ここ二、三日、目が覚めたと思ってはゆるゆると夢の世界へ連れて行かれていた文羽は久しぶりの麻樹との再会だった。
「親には連絡したの?」
「うん。……頑張って治せとだけ言われた」
麻樹は文羽とは高校からの付き合いなので、文羽の親を知らない。文羽は高校から一人暮らしをしていて、家には帰ってないからだ。しかし文羽が親と上手くいっていないことも、親の方が文羽に関わりたがらないことも知っていた。
「……そっか」
麻樹は頑張れば治るものなのかとも、文羽に問わない。無駄な質問だと分かっているから。
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