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「……最近ね、夢を見るの」
「夢?」
麻樹は花を生ける。文羽の周りに息をしない物が多い中で、唯一の生きているものだった。
「……あたし、鳥なの。小さな小さな小鳥。羽を頑張って動かして飛ぶの。飛んでる間は羽を動かすことしか考えてなかった。下の景色なんて見てない。前しか見てないの。それでね、何度も何度もそんな夢を見るから、あたし、実は鳥なんじゃないかって。今は……変な夢でも見てるんじゃないかって」
変なこと言ってるね。文羽はそう言って笑う。しかし麻樹は文羽を否定しなかった。
「私そういう話、聞いたことあるな。外国のお話なんだけど、今自分が見ている夢が現実で、現実の方が夢なんじゃないかって」
「そっか。……あたしもその気持ちわかるな。もしかしたら小鳥のあたしが本物かな」
文羽は弱く笑う。
麻樹はそれでもいいと思っていた。鳥になって、どこまでも飛んでいけることが出来る翼を持てばいいと。
「……麻樹。本当にありがとね。本当に、ありがとう……」
「文羽?」
麻樹は慌てて文羽の方を覗き込む。文羽は小さく胸を上下に動かして寝息を立てていた。
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