104人が本棚に入れています
本棚に追加
SNSに目を通す。
検索する投稿は2ヶ月前から変わっていない。
新宿 歌舞伎町 刺傷事件
この三つのキーワードを検索にかけ、最新情報に喰らいつく。
事件発生直後に比べるとかなり少なくなったあの事件の投稿。
話題も薄くなり、きっと関わった者以外の記憶から消されつつあるのだろう。
興味をなくせばこの有り様。
また次のおもちゃで遊ぶだけ。
もう目新しい情報を載せるものはなかった。
見尽くした、と言った方が正解なのかもしれない。
「まぁ〜たその事件調べてんの?」
暇を持て余している様子の小堺(こさかい)さんが眠気覚ましのブラックコーヒーを啜りながら俺の背後を通る。
「勝手に覗かないでください」
小堺さんに見られたSNSをすぐさま閉じ、スマホ画面を隠すようにテーブルに置く。
その様子に「見えちったんだよ」と小堺さんは言った。
「同級生だっけ?その事件の被害者と加害者」
目の前に広がるいくつものモニターをボーっと見つめながら小堺さんが尋ねる。
その顔には"帰りたい"の文字が張り付いていて、警備員としては全く頼りにならなそうな雰囲気を醸し出していた。
小堺さんの問いに黙って頷くと、彼は痰を吐きだす手前みたいな汚い音を喉から出した。
「相当レアな事だよなぁ。被害者と仲良かったんだっけ?」
「まぁ、それなりに」
元カレ、とは言わない。
そんな情報を追加したら小堺さんの肴にされてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!