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「好きな人と結ばれたいのなら、このスノードームを想い人に贈るそうです」 理由を聞いてまた吹き出してしまう。 なんともまぁ、可愛らしい作り話だ。 「杉山さんってオカルトや魔法とか信じるタイプですか?ちなみに俺は全く信じていません。神さえも」 俺の問いに彼は頷いた。 「無宗教ですけどね。ただピンチの時や何か強い願いがある時は自然と神様に祈っちゃうんです。お賽銭もいつもより多く投げて神頼りですよ。よくよく考えたら神をたかが100円500円で買収しようなんて、バチ当たりですよね」 「100円500円ならまだいい方ですよ。10円投げてお祈りする輩もいるんですから」 そんな会話をしている間に飲み物とサラダをウェイターが運び、テーブルに並べた。 サラダのドレッシングはビネガーの香りがして鼻の奥をツンと刺激する。 彼が取り皿にサラダをよそい俺の前へ差し出す。 大きな生ハムとキュウイが色鮮やかで、実際目の前にすると余計味の想像が付かない。 「乾杯しましょう」 オシャレな柄のグラスを掲げ飲み口を軽く当て合う。 カチンと甲高い音を立てたあと、同時に飲み物を喉に流した。 「…壱岐の海って綺麗らしいですね」 生ハムにキュウイを巻き、フォークで刺しながら話題を振る。 何となく沈黙が気まずくて。 「はい。とても綺麗ですよ。ハワイの海に負けないくらい」 そう答えた彼がポケットからスマホを取り出し、画面をスクロールした。 そして「ほら」と言い、俺にスマホを渡す。 彼のスマホ画面には、真っ青な海が広がっていた。 まるで永遠を具現化した様にどこまでも広がる海は、シロップのブルーハワイと並ぶくらいに青々と光っていた。 青空が霞むくらい、美しい。
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