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一.
ある国、春の夕暮れ。
学生服姿の男女が二人、大きな野生の桜の下で向かい合っていた。
と、女子が意を決したように拳を握り、
「あ、あたしと付き合って!」
満開の桜を散らすかのように、わずかに震えうわずった声を響かせた。
その言葉に男子は驚きの表情を浮かべながらも、それはすぐに大きな笑みへと変わり、
「あぁ!ワシと付き合ぅてくれ!」
一陣の風が吹き抜け、男子の周囲を静かに舞っていた花弁が激しく巻き上がると、祝福のフラワーシャワーの如く女子の頭上へと降り注いだ。
が、
「……え?なんで?」
女子はなぜか目を丸くして呆然と、開いた口もふさがらないといった様子で、
「えぇ?何がじゃ?」
男子は首を傾げて尋ね返した。
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