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「だ、大丈夫だから? あんまり近づいちゃダメ」 「あ、ごめんなさい? 近かったですね」 莉子が申し訳無さそうに隣に戻ると、月風は嗅いでしまった香りに引っ掛かっていた。 (この子からは甘い香りがしたけど… 普通は血の香りしかしない筈… 何だろ、この感じ?) 「泉くん?」 「な、何?」 「考え事してたら危ないですよ?」 「あ、うん? 南月さんはご両親と住んでるの?」 「あ、莉子でいいです。 私も月風くんって呼んでも?」 「良いけど?」 「じゃあ、月風くん」 莉子はニッコリ微笑むと、月風はまた香りが漂ってくるのでハッとなる。 「あ、着きました。 どうぞ?」 「お邪魔します?」 月風はマンションの部屋に上がり込むと、人の気配がないので焦る。 「莉子は一人暮らし?」 「あ、はい? 偶に兄と弟が泊まりには来ますけど…」 「そ、そうなんだ」 「あ、月風くんは座ってて? 倒れてたんですから」 「あ、ありがとう?」 月風は言われるままにソファーに座ると、足元に白猫が寝転んでいた。 「わっ?!」 「どうしました?」 「あ、ごめん? 猫が居てビックリした」 「ふふっ ルリ、ご飯欲しいのかな?」 「ミャー」 莉子はフッと微笑むと、お皿にツナ缶を移してから餌を与えていた。 「月風くんは何が好きですか?」 「えっと…」 「今日はパスタの予定で、トマトベースなんですけど食べれますか? 食欲がなければお粥や雑炊にしますよ?」 「嫌、パスタで大丈夫」 月風はそう告げてしまったが、果たして食べれるのかと考えていた。
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