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「なら、出来るまで寝てます? 具合悪いでしょ?」 「嫌、平気」 「なら、すぐ作りますね」 「あ、ありがとう?」 月風はやはり少し戸惑っていたが、莉子の笑顔を見ると要らないとは言えなかった。 暫くして莉子はパスタを完成させてテーブルに運ぶと、月風を見るとソファーに寝てしまっていた。 「月風くん?」 「…甘い…匂い」 「へ?」 莉子がビックリしたのも当然だった。 首筋に月風の顔が近づいてきては匂いをクンクン嗅がれていたからだ。 「…る、月風くん?!」 「へ? な、何してんだ俺?!」 月風は自分の行動に驚いていたが、莉子は真っ赤になっては困っていた。 「ごめん、莉子」 「ううん? それより、匂いって何? 香水かな?」 「あ、多分そうかも」 「ふふっ ビックリした」 莉子はニッコリ微笑むと、テーブルを指差してくるので月風も座る。 「いただきます」 「い、いただきます」 月風はフォークでパスタをグルグル巻くと、意を決して一口食べてみた。 「…んまい」 「へ? 今何て?」 「…美味い! トマト苦手だったのに甘い」 「…あ、そうだったの? 大丈夫?」 「うん? 莉子の料理は美味しい」 「それなら、良かった」 莉子はニッコリ微笑むと、ルリが足元でゴロンと寝転んでいた。 「月風くん、猫平気?」 「あ、うん?」 「ルリは噛んだり引っ掻いたりしないから大丈夫だよ?」 「みたいだな」 月風はまた一口パスタを食べると、しっかりと全部食べ終えてしまった。 「デザートにイチゴ食べませんか?」 「イチゴ?」 「あ、はい? 嫌い?」 「…嫌、食べたことない」 月風がそう告げると、莉子はまたやんわり微笑むと、イチゴのヘタを切ってから練乳を掛けていた。
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