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「食べてみて? 甘くて美味しいの」 「…赤い」 「へ? イチゴは赤いよ?」 「嫌、何もない。 いただきます」 月風はイチゴをパクっと一口食べると、酸味と甘みが同時に口の中に広がる。 「ふむ、美味い」 「ふふっ 月風くん、少し元気になったかな?」 「あ、そうだね」 月風は帰らなくては行けないと思い立ち上がったが、莉子がギュッと手を掴んでくる。 「莉子?」 「あ、ごめんね? 帰らないとご両親とか心配するよね?!」 莉子はパッと手を離すとソファーに座り直していたが、月風はフッと微笑む。 「もしかして、一人だから寂しい?」 「…!」 「図星?」 「うん? でも、大学生だから一人暮らししなさいって言われて…」 「大学生だったんだ?」 「あ、うん? 月風くんは?」 「俺も大学生だよ」 「私、1年生です」 「俺は2年」 「年上だったんですね? タメ口になってたかも」 「いいよ、別に? 呼び捨てでも構わないし」 「そ、それは流石に…」 莉子が少し戸惑っていると、月風は隣に座ると手をギュッと握ってくる。 「…月風くん? 何?」 「安心させようかと思ってね?」 「な、なるほど?」 莉子は急に握られたのでドキドキしていたが、月風は特に気にしていないようだ。 「…莉子、心拍早すぎだよ?」 「え?」 「緊張させたらダメじゃんな」 月風はパッと手を離すと、莉子はギュッと服を掴んでくる。 「莉子?」 「あっ… ごめんなさい! 離したら寂しいなって…」 「…やっぱ甘い香りするな」 「へ?」 莉子が拍子抜けした顔をすると、月風はソファーに押し倒すと首筋に顔を近づけては香りを確かめていた。
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