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二曲目
イントロが流れた瞬間、観客は一斉に湧いた。
♪ 西武線のホームで悩ましげな君とワルツ
新宿のドトールで待ち惚けの君とワルツ
秋津駅のマックから新秋津までトリップ
〈ワルツ〉は、その曲名通り、グリーンワルツの代表曲である。都内の具体的な場所名を挙げていく歌詞と、切ないメロディーラインのギャップが若者のあいだで話題を呼び、再生回数はみるみる伸びた。
グリーンワルツの方向性を決定づけた一曲でもある。70、80年代風のシティポップ。
録音されたショウの音声が歌うたび彼との記憶が蘇る。私達の生活圏で構成された曲がヒットした時、まるで互いの思い出までもが他人のものになってしまったようで寂しかったけど、こうして皆が腕を回して、飛び跳ねているのを見ていたら全然そんなことはなかった。
プライベートのショウを知る優越感?
ううん、違う。
心から嬉しいんだ。もう二度と更新されない私達の歴史が、視聴回数やSNS、そして皆の記憶に託されてこの先もずっと続いてく気がして。
アップテンポなヒットソングに乗せられて、箱の温度は上がってく。
♪ 池袋のガストで眠たそうな君とワルツ
江古田のミスドで何でもない君とワルツ
川越の小江戸から本川越までトリップ
トリップ アンド トリップ
いこうよ 喧騒が呼んでる
おいでよ 思い出が呼んでる
私も梨沙も言葉が出ず、どちらからともなくぎゅっと手を繋いだ。
そのまま休憩なく、三曲目。
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