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1話完結・読切
2月14日の昼休み。旧校舎の裏。後輩の女子に呼び出されたアイツ。
「甘いモン苦手なんだわオレ。マジでゴメン」
ほらね。今年も超テキトーな言い訳。
ホントはスイーツに目がないのに。"手作り"を食べられない。昔っから。
幼なじみだから知ってる。
お店の料理は平気。あと、お母さんの手料理。それ以外はムリ。
「オエー」なんて平気で言う。サイテー。
タチの悪い潔癖症。
なけなしの勇気とプライドをコッパミジンにされた女子は、一目散に校庭に走ってった。
入れ違いにアタシが、校舎の陰から飛び出す。
アンタは、ギョッとした。
「ノゾキ見かよ!」
「たまたま通りがかっただけ。ま、完璧に気配を殺してたから。気付かなくても当然」
「理不尽な言い訳かましながら妙なマウントまで取るの、やめてくれん?」
「そんなん言うなら、やんない、これ」
「あ、待て待て。こっちは便宜上チョコが食えない設定を貫いてんだから。オマエだけが頼りだ」
って、アタシの抱えてたトートを奪い取ると、ヘラヘラと中をのぞく。
「よし、毎年恒例の板チョコ尽くし! こーいうのでいいんだよ、こーいうので」
ったく。こんなのが、なんで女子にワーキャー騒がれんの?
春休みはアッという間に過ぎた。またアイツと同じクラス。完全な腐れ縁。
親友のミカとクラスが別れたのは超さびしい。でも、何かとウチのクラスに遊びに来てくれる。
今日も、家庭科で作ったクッキーを紙皿に山盛りに持ってきてくれた。
「甘さひかえめにしてみたんだ」
って、モジモジして。
とたんにアイツが飛んできて、1枚ツマんで、丸ごと口に放り込んだ。
ミカの手作りを。ヤケに幸せそうに食べるじゃん。
「え、泣いてんのオマエ? どした?」
ちょっとムセながら、アンタは聞いてくる。
「アンタが、バカみたいにガッツクから。おかしくって……たまんない」
オオゲサにオナカ抱えて肩を震わせて。アタシは、ヘタな言い訳をした。
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