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「最後のアレが余計だったわね」
ミホちゃんがカレーライスを食べながら言ったので、ぼくは口に運ぼうとしていたスプーンを一瞬止めて考え込んだ。空中でわずかに震えながら静止するスプーンは、その上にちょこんと乗ったカレーライスも含めてまるで何か深淵な意味合いを持った芸術作品みたいだった。題をつけるとしたら、そうだな、「永遠」とかどうだろう。
ミホちゃんがじっとこちらを見つめるので、ぼくは何でもないふりをしてスプーンを持つ手を動かした。その永遠にも思える瞬間を乗り越えて、スプーンはようやく僕の口に到達し、カレーは喉を通って僕の胃まで滑り落ちていった。さて、気を付けなければいけない。ぼくは表情を顔に出さないように努めながら懸命に考えをまとめた。
「最後のアレ」とはなんのことだろう。まさか、もう気付いている?いや、それにしては彼女の行動は不可解だ。カレーをゆっくりと咀嚼し続けるミホちゃんを見ながら、僕は忙しく考えを巡らせた。
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