メイドは世界を欲してなどいなかった

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メイドは世界を欲してなどいなかった

「アシュティ……」  クラリッサのか細い声が耳元で響く。椅子に座るアストロの正面から覆い被さるように抱き着いたクラリッサの柔らかい重さが全身を包んだ。  布が擦れる音の中に唇が重なる音がする。  暖炉から漏れる灯りは赤らんだアストロの顔を写し、蕩けきったクラリッサの顔を暗く照らしている。 「クラーラ……んっ……」  メイドの立場は既に捨て、この時ばかりはひとりの女として振る舞うことに決めていた。もう彼の結婚相手は決まっている。それでも、いや、だからこそ、公女のものになる前に自分のものにしたかった。  冬であるにもかかわらずとても暑い。ワインのせいでも暖炉のせいでもない。 「私が選ばれないことは知っています。それでも、私は……この時だけでいいのです。今だけ、私をあなたのものにしてください」 「……今だけにするつもりはない」  王子の言葉は嬉しかった。  今までのどの言葉よりも。  それでも、公女のものになってしまうのは既定路線だ。 「私がどれほど……どれほど待ったと思っているんですか。あなたの専属になると決めたその日から、私はずっと……あなたの傍で……アシュティ……あなたを愛してしまったのですよ……」  次の言葉を遮って再び唇を重ねる。  言葉より、行動。  今のふたりに、理屈など要らない。  愛したいという気持ちが高まる、それだけで十分だ。  唇を重ねたまま、クラリッサはメイド服のボタンをひとつづつ外す。外した隙間に差し込まれた手が豊満に育った果実を撫でると、声にならない溜息にも似た吐息が漏れる。  王子はメイドの首筋に舌を這わせ、その下に進むことを促す。はだけた服の隙間を縫うように、鎖骨から胸へ。メイドはそれを差し出すように身をよじった。 「あっ……」  大人の果実の頂に舌が触れた。続いてそれは口に含まれて、丁寧に舌先で転がされた。舌が動く度、背筋から指先までを何かが走る。甘い声をこぼす度、舌は激しく動いて休ませてはくれなかった。  好きな人に触れられるのはこんなにも気持ち良いと知った。  もう全く寒くない。  胸や背中を覆う布は床に落ち、王子の目の前にそれは顕になった。市場に並ぶどのリンゴよりもそれは大きく、手に持てば重く柔らかく、口に含むと耳元で甘い声が聞こえる。  胸をいじめられて下の口が寂しくなってきたのか、メイドの腰が王子のモノを求めて激しく前後に動き、満足したいと主張する。硬くなった王子のモノに擦り付けて、愛されたいとねだった。
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