先客

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先客

 屋上に行くと、先客がいた。  一匹の猫が、柵を超えるのに丁度いい位置から動こうとしない。 「どけよ。邪魔しないでくれ」  すると足にまとわり付き、ニャーと見上げる。  その目が、死んだ婆ちゃんにそっくりだった。 「──分かったよ。死ぬの、やめるよ」  俺は泣きながら猫を抱きしめた。
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