しょうもない接待のあと

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しょうもない接待のあと

  登場人物  たまずめ部長  拙が持ち込んだバスの本読んで、山人、たまずめって何?って名言残した人物。この人を連れて、宮城の夕釣りを2度ほど楽しんだりした。フローティングワームでバスを釣ったりしてた。前社長が夜逃げして、今は社長。 中村課長  拙と同い年の上司。面接の時にいた頭の悪そうな兄ちゃん。それがここまで仲良くなるとは。バスに関しては、まず拙に買っていいかどうか見せに来る。彼を中途半端なトップ屋にしてしまった拙には若干の悔いがある。  ジョン  当時の社内メンバーで1番の年上。金の使い方がおかしい。給料出ると吉牛の特盛2つとか食うくせに、給料日前は水しか飲まなくなる。ココイチお子様カレー何これ?事件はあまりに有名。一番安いの買ってきて。とか言うから。ついでに今日建て替えたタバコ代払えって言ってやったら、その後一切話しかけてこなくなった。貴重すぎる釣りの反面教師を進んでやってくれた聖人。  おっぱい  おっぱい。拙と同年の男。結局、仲違いしたまま別の道を歩むことに。宮城の夕釣りで、ジッター失投して足元に落としたら、着水でランカー釣っちゃった奇跡を起こした人物。  郵便  最後輩。可愛がってやってたら、影で拙をボロクソに言っていて、危うく左遷の一歩手前まで行ったことがある。こいつの陰口に気付いてくれたたまずめ部長には感謝。しかし、左遷されそうになったのはたまずめ部長がこいつの陰口真に受けたからじゃないか?と今は思っている。  昼前、上州屋の場所を得た拙は、最後の望みをかけて、バスを探しに行った。  もう完全アパッチ(斥候)の気分。  ベイトを引っ張り出し、橋の下の水たまりをぶらついたが釣果もない。  とりあえず、ストラクチャーの隙間にクリップルドキラー通すのだけは上手くなった。  近所のコンビニで弁当立ち食いして、そのまま近くの上州屋に行った拙は、そこで策略の内容を聞かれた。  うむ、だって、朝ナマズ釣れたっしょ?水門でラバジ撃ってた兄ちゃんも、ナマズばっか言うてましたやんか。なら手は1つですぜ。  そういって、拙は、ルアーフィッシングの禁じ手に手を出した。  さーせん、バレットシンカーとハリスを2つ、それから、  迷いのない目で、拙はこう申し上げたのですわい。  ドバ2つください。  生エサ買って最初に支流に戻ることになった。  おっぱいも郵便も、ワームは散々投げたって文句言っていた。  うるせえ。てめえ等みたいなずぶの素人と一緒にすんじゃねえ!グダグダ言ってると支流に放り込むぞ!あとは徒歩で帰れ徒歩で。  やさしさの欠片もない山人の姿がありました。  さて、ルアーフィッシングの神髄は、生きていないルアーという木片を、まるで生きているかのように操ることにある。  つまり、ルアーやってて生エサとか、大会でやったら永久追放、大会じゃなくても白い目で見られる許されない行為だった。  知らねえよう。釣りもろくに知らないたまずめ部長以下、課長、ジョン、おっぱい、郵便と、全員を勘違いした釣りアホもどきにしてしまったのは、他ならぬ拙にて。ならば、その責を取らん。  大体、トランクからベイト一式取り出す時に、既に見えていたんだこの可能性は。  バレットシンカーに道糸通して、鯉釣り用の3号ハリスを結んで、ドバミミズ付けて放り投げた。  竿貸せ。繋いでやっから。中村あ!食ってんぞ巻け!  うわああ!ごめんなさい!って騒いで中村が竿を握った。  それからはもう入れ食い。投げて5秒もしない内に、50センチオーバーの、2尺のアメキャがかかるかかる。  ナマ釣りの予行演習みたいだが、和ナマとアメナマじゃあ食性が違う。  匂いを敏感に感じて食いつくアメナマと、振動を感知して追ってくる和ナマ。    要するに、ジッターとかで釣る和ナマと、ミノーシャッドで出るアメキャじゃ練習にもならない。  どっちも矢鱈引きが強いってだけ。  霞ヶ浦では、うっかり逃がしちゃったアメキャが、物凄い勢いで増えていったらしいが、まさかここまでとは。  何か、接待にかこつけて、大切な誇りをかなぐり捨てた拙の姿があった。  本湖に戻ろうぜ。とか何言ってんのよ部長。支流がギリだって!本湖で生エサなんかーー畜生。  たまずめ部長が本湖で釣ったアメキャが一番デカかった。竿頭は結局たまずめ部長だった。  大切な何かをかなぐり捨て、社内の地位を獲得した拙の、結構なしょうもない悪夢の思い出です。  ぶち込め!四番バッターキャスティング!それじゃあまた。
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