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ど、う、し、て。
口の動きだけでこぼれ落ちた彼女の声に、僕は純粋な心でこたえた。
『だって、芽依ちゃんには僕がいるでしょう?ほら、寂しくないよ』
『……颯、くん』
初めて、交差した視線。
彼女の唇は、気づかないほどに、小さく震えていた。
『……そうだね。寂しくないよ』
『僕がいるから。みんながいるから』
『うん』
『うん』
真っ白な一匹のうさぎが、うなずきあう僕らを不思議そうな目で見上げていた。
それから、一ヶ月後。
彼女は持病で亡くなった。
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