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ひょっとしたら、そうかもしれない。わりと最初から僕はそれを疑っていた。何故なら鬼ごっこをしている時、木陰からこちらを覗いている彼女を見つけるのはいつも僕だったから。他の子たちは、僕が気付くまで一切彼女の存在に気付かないという。僕にそういう素質があったのか、彼女に僕一人が見初められていたのか。
確かなことは。彼女と遊ぶと、その日のうちに必ず僕は怪我や病気をするということ。
初日は腕に擦り傷を負った。
二日目は右手を突き指した。
三日目はちょっと熱っぽくなった。
四日目は倒れてきた棚がぶつかって、背中に大きな打ち身をした。
五日目は咳が出るようになった。
六日目には、頭痛もするようになった。
「なあ、ライ」
遊び仲間の一人がさすがにやばいと思って、僕に声をかけてくる。
「明らかにお前、具合悪いじゃん。家で休んでいた方がいいんじゃねえの?無理に遊びに来る必要ないって」
「嫌だよ、僕はみんなと遊びたいんだから」
それに、と僕は心配してくれたその子を睨んで言うのだ。
「僕が来なかったら、サクラちゃんは誰が見つけるんだ?僕しか、あの子に気付けないのに」
お祖父ちゃんたちにバレてはいけない。バレたらきっと、あの子は悪い妖怪として退治されてしまうと、そう思った。不思議なことに僕は、あの子が悪意をもって僕を傷つけているとはとても思えなかったのである。何故なら僕が会いに行くたび、彼女は誰より僕の怪我や病気を心配してくれるのだから。
よくよく考えれば、おかしいとしか言いようがない。僕は、明らかにあの子に魅了されていた。様子がおかしいなんてこと、親戚の子たちが気付かないはずがない。彼らがお祖父ちゃんに告げ口するのは必然だったし、なんなら神主のお祖父ちゃんが何も気づかないなんてことあるはずがないというのに。
「お祖父ちゃん、何すんだよ!」
七日目、僕はついに血を吐いた。それでもふらふらの体を引きずって神社の境内に行けば、なんとお祖父ちゃんが工事現場のおじさん?みたいな人に指示を出しているところだったのである。おじさんは大きな機械で、いつも女の子が隠れている桜の木を引っこ抜いてしまっているところだった。
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