君は確かにそこにいた。

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君は確かにそこにいた。

 それは、僕が小学生だった頃の話。  僕のお父さんは普通のサラリーマンだったが、お祖父ちゃんはいわゆる神職というやつだったらしいと記憶している。神社で神主さん?みたいな仕事をしていたようだ。田舎に遊びに行くと、それっぽい和装をしたおじいちゃんに出迎えられることも少なくなく、子供心に“なんかよくわかんないけどかっこいい!”と思った記憶がある。おばあちゃんは巫女さんの衣装を着ていた。こっちもとっても綺麗で素敵だった。  僕が三年生、四年生くらいの頃、小学生の子供たちが霊能力者のお兄さんと協力してオバケ退治をするアニメが大流行していたのを覚えている。  その霊能力者のお兄さんが普段は神主さんをやっているという設定だったため、当時の僕らにとっては神主さん=オバケを退治するかっこいい霊能力者、的なイメージがついていたのだった。  ゆえに、僕はお父さんとお母さんに連れられて田舎のお祖父ちゃんの家に行った時、お参りをしつつしょっちゅうこんなことを尋ねた記憶があるのである。 「ねえねえ、お祖父ちゃんって幽霊とか妖怪とか見える人なんでしょ?神主さんだから、すっごい霊能力とかあるんだよね?悪い幽霊とか、全部やっつけられるんだよね?すげーなあ、僕もそういう血が流れてるのかな!」  将来は、自分もかっこいいゴーストバスターになってみたい。なんてことを、わりと本気で考えるような子供だった僕である。お祖父ちゃんも、子供たちの間で流行しているアニメは知っていたようで、神主ってそういう仕事じゃないんだけど、と笑っていたと思う。 「神職だからって必ずしも霊能力が高いとか、オバケが見えるってわけじゃないんだけどねえ」 「ええ、そうなの?お祖父ちゃんも見えないの?」 「見えなくはないけど、お祖父ちゃんの力は大したことないよ。それに、オバケとか妖怪とか言っても、全部が全部悪いものじゃないっていうのは、ライくんも理解していてほしいかな」  ライくん、というのは僕の名前だ。ライキ、という名前だったので周りにはライくんと呼ばれることが多かったのである。 「元々日本にはたくさんの神様やあやかしがいて、私たちは彼らと共存して暮らしていたんだ。昔の人は、今よりもっとそんな“人あらざるもの”を見ることができたんだよ。彼らも、人間と一緒さ。人と仲良くできる子もいれば、仲良くできない子もいる」  お祖父ちゃんは僕の頭を撫でながら、こう告げたのだった。 「アニメのせいで、妖怪って悪いもののイメージがついているかもしれないけれど……中には“絶対に退治してはいけない妖怪”もいるし、“人間を助けてくれる妖怪”もいるんだ。そういうのを、ライくんも忘れないでいてくれると嬉しいな」
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