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「クリスティーナ様、私……実は、男の方が苦手なのです」
「死神伯どうこうではなく、世の中の男性が?」
「男性に見られることが嫌です……」
クリスティーナ姫は、ああ、と納得した。
「アイリーンほど美しければ、男性は目を奪われてしまうでしょうね」
「クリスティーナ様も同じ顔をしているから分かるのですか?」
「いいえ、アイリーンは見たこともないほど美しいわ。作りはわたくしとよく似ているのに、なぜかしら? 色香があるのね」
ユリシーズ様が贈ってきた砂糖菓子は、卵白と砂糖が混ぜられたお菓子。
薄い黄色やピンク色といったかわいらしい色をしていた。
クリスティーナ姫は黄色のそれを一粒つまんで私に差し出すと、「このお菓子みたいよ」と笑う。
「とても儚くて脆い印象を受けるの。あなたは、わたくしよりも壮絶な人生を送ってきたのかもしれない。そう思わせる雰囲気をまとっているわ」
クリスティーナ姫から渡された砂糖菓子を口に含む。メレンゲが使われているらしく、しゅわっと溶けるようになくなった。
「男性に見られることに堪えられない私が、ユリシーズ様と結婚などできるのでしょうか?」
「わたくしもあと数か月したらアイリーンとして嫁ぐわ。皇族になるの」
「……」
「……」
「一生を共にするって、もう次は無いということですよね」
「そうね……」
私たちは、漠然とした不安を共有した。
本来、クリスティーナ姫がユリシーズ様に嫁ぐことになっていたら私はここにいない。
巻き込まれたのは私なのに、今はクリスティーナ姫と出会えてよかったと思っている。
「ねえ、アイリーン。わたくしたち、絶対にまた会いましょうね」
「はい。いつか必ず」
再会の約束は、生き延びる約束。
運命を諦めない約束。
お互いを信じる約束だった。
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