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そのまま馬車に乗り込んで、死神伯の元に出発した。
荷物は少なく、どう見ても公爵家の嫁入りには地味すぎる出発だった。
何時間馬車に揺られたのか分からない。
ユリシーズ様の屋敷に着いた時、すでに辺りは暗くなりかけていた。
夕暮れに、立派なお屋敷が監獄のように暗くそびえている。
馬車から降りると、お屋敷の執事らしい年配の男性が私を迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました、クリスティーナ姫」
「はじめまして、クリスティーナです。ユリシーズ様は、お屋敷の中に?」
「はい、それはもう、楽しみにお待ちしております。わたくしが家の中で待っているように伝えたところ随分と睨まれましたよ」
死神伯に睨まれると、金縛りにあうのではなかったかしら?
執事の方は平気そう??
さて、クリスティーナ姫に恋焦がれていたユリシーズ様が、私を見てどんな反応をしてくれるのか……。
見破られたら、私の命はここで終わるわね。
私の家より3倍くらいは大きなお屋敷。執事の方が入口を開く。
そこには、黒い髪、銀色の目をした男性が立っていた。
「初めまして、ユリシーズ様。クリスティーナです」
「……クリスティーナ様」
挨拶をして頭を上げると、銀色の目がこちらをじっと見ている。
今のところ、私に金縛りは来ていない。
「こんなにお美しい方が、この世に存在したのですね……」
「……はあ」
目の前の死神伯は、そう言ってポロポロと涙を流していた。
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