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新生活
死神伯ことユリシーズ様は、私を食堂に案内して夕食の指示をしていた。
向かい合って座り、時折ユリシーズ様を見る。
私の結婚相手である死神伯は、思っていたのとは全く印象が違っていた。
まず、銀色の目は動物のようでかわいらしい。
顔は整っていて涼しい印象を受ける美形だし、身体は大きくて頑丈そうだった。
さすが武人らしく、節くれだった手はゴツゴツしているし、顔にも手にも怪我の痕らしい痣がある。
私が視線を配ると真っ赤になって慌ててしまい、こちらを直視できない様子だ。
気付くと視線を感じてそちらを見るけれど、その度に目線を外された。
「あの、ユリシーズ様」
「はいっ、ユリシーズとお呼びください」
「ユリシーズ」
「ああっ! ありがとうございます!」
手を組まれて拝まれている。不思議なタイミングでお礼を言われてしまうとなんて返せばいいのやら。
「わたくしたちは、いつ結婚するのですか?」
「は、はい。婚姻でしたら既に公爵家から届けを出していただいているはずですので、私たちは既に夫婦かと」
「えっ??」
公爵家の誰がその手続きをやったのかしら。
その辺の事情を教えていただかないと非常に困るのですが。
「わたくしたちは、もう夫婦だったのですか?」
「は、はい……」
「ということは、わたくしはクリスティーナ・オルブライトになっていたの?」
「はい、クリスティーナ様は、オルブライト家の……」
そこでユリシーズは悶絶していた。
なぜか大きなぬいぐるみみたいだわと思い、ユリシーズをじっと観察してみる。
「クリスティーナ様、どうしてそんなにじろじろ見てくるのですか? 私の顔に何かついておりますか?」
「ユリシーズが綺麗だから、つい」
「何を! クリスティーナ様の方がお美しいではないですか!」
「そうかしら。あと、わたくしのことも、クリスティーナで良いわ」
「いけません! そんなこと! なりません!」
ユリシーズは目に涙を溜めて私の提案を否定した。
なにがいけないのか理解に苦しむ。夫婦なのだから呼び捨てにしてくれればいいのに。
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