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お屋敷で提供された夕食は、至って普通のメニューだった。
薔薇に豚の生き血をかけて寄越した人の食卓とは思えないくらい、普通。
勿論、食卓は普通の方がいい。
「クリスティーナ様のお部屋にご案内します」
夕食後、ユリシーズは私と侍女のエイミーを大きな部屋に案内してくれた。
赤と白が基調のインテリアで、部屋には、鏡台、机、テーブル、ソファ、そしてベッドが二つ並んでいる。
「ここが、わたくしとユリシーズの部屋ですか?」
「いえ! 部屋が同じではくつろげないかと思いましたので。こちらはクリスティーナ様と侍女のエイミーさんでお使いください」
ユリシーズは夫婦で別の部屋を使うと言う。
それって??
これから、別々の部屋で過ごすのかしら??
「今日は長旅でお疲れでしょうから、部屋でゆっくりしていてください。何かあれば部屋の外に向かってお声をかけていただければ誰かが参ります」
「はあ。はい。かしこまりました」
あまりに意外な展開で、私はうまく反応できなかった。
今までお父様の周りにいた男性たちは、隙あらば私を手籠めにしようと目を光らせてくる方ばかりだったのに。
男の人というのは飢えた獣のようなものだと思っていたら、違うのだろうか。
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