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朝になり、エイミーに手伝われて着替えていると、「朝食の準備ができておりますので、ご都合の良い時にお越しください」と使用人らしき方の声がした。
「支度ができましたら向かいます」
扉の外に声をかけて、私は昨日の夜に見たユリシーズを思い出していた。
今のところ、私がクリスティーナ様と別人だと気付かれている感じはしない。
だけど、昨日見た控えめなユリシーズには何か違和感がある。
「エイミー、実は昨晩、ユリシーズを見たの」
「えっ……?! それは一体……」
「見間違いでなければ、あの窓の外にいたわ」
「あの窓、ですか?」
私が指をさした窓の方を見て、エイミーは困惑していた。
「確かにバルコニーはございますが、部屋の中からでなければ立ち入れない場所ではないでしょうか?」
「部屋の中からでないと……?」
エイミーの言ったことが分からなくて、私は首を傾げた。
そうよ、ここは2階で……外のバルコニーはこの部屋からしか行けない作りになっている。
あのユリシーズは、どこから来てあの窓の外に立ち、どこに消えたの?
「もしかして、夢でも見たのですか?」
エイミーは私が夢と現実の区別もつかなくなったのだろうと笑う。
あれが夢なわけがない。
私はあの時、確かに窓に張り付いて外を見て……窓がひんやりとしていた感覚も覚えている。
「……?」
あまりに不可解で唸ることしかできない。
私は着替えが終わり、エイミーによって髪を整えられた。
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