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翌朝、バートレットとエイミー、ウィルを連れてユリシーズの匂いが見つかった場所に向かった。
私は乗馬服を着ていて、森の中を散策するつもりでいる。
「バートレット、また何か抗議の手紙が来ていたのではないの?」
「……そんなもの、無視してください」
「どんな『ご意見』が来ているのかを知るのも主人の役目ではないかしら」
馬車の中で、バートレットに尋ねる。ユリシーズが亡くなってから、心無い手紙や異議申し立てが家に届くようになっていた。
「フリートウッド家が降爵になったのであれば、奥様の出自も見直される必要があるという意見が主です。伯爵の遺産を継ぐ資格はないのではないか、というものが3件、遺産を放棄して実家に帰るべきだ、というものが2件ほど来ておりました」
「他人の家のことに、よくもまあ偉そうに口を挟めたものだこと」
「わたくしめも全くの同意見です」
バートレットは、以前よりも私の肩を持ってくれることが増えている。
ありがたいような気もするけれど、ユリシーズがいなくなったからだと思うと複雑だ。
「世間は私を悪女に仕立て上げたいのでしょうね。英雄の元に嫁いで、父親である公爵様が裁判にかけられている最中に未亡人になり遺産を相続したのだから……まるで伯爵の遺産を狙っていたように見えてもおかしくはないけれど」
「奥様のことをご存じない方が勝手を言っているだけです!」
エイミーは私よりもずっと怒っていた。ウィルは、向かいの席からエイミーを穏やかに見ている。正義感の強い彼女には、こういう人がそばにいるのがいいのかもしれない。
「私のことは稀代の悪女だとでも思ってくれたらいいわ。変に同情されるよりも、その方が気が楽だもの」
「奥様は、誤解されて悔しくないのですか?」
「どうかしら。狡い女だと思われて嫉妬されている方が、それだけ幸せに見えているのねと思えるのよ。見ず知らずの人に同情されるより、ずっとマシではないかしら」
エイミーとウィルがしゅんとしてしまった。
もうすぐユリシーズの手がかりがある場所に着くというのに、落ち込ませるつもりは無かったのだけれど。
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