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暫く二人は一つの場所を掘り続け、そして何かを掘り当てる。
恐る恐るその様子を見ていると、ユリシーズの上着らしき服が出てきた。
「服……よね」
「どうやら、匂いの元はこちらですね。誰かによって埋められたのでしょうか」
「どうして服が埋められるの?」
「さあ……」
その他にも何か手掛かりがないかと周囲を探してもらったけれど、特にユリシーズの匂いがする場所はないのだという。
「もう少し……帝国中の町や村にも捜索に行ってもらえる? 目撃証言がないか探って欲しいの」
「かしこまりました」
「バートレットはユリシーズの捜索を続けることに反対はしないの? お金も時間もかかってしまうし、内心は呆れていると思うのだけれど」
「いえ。今回のご主人様には一点だけ不審な点がございますので」
「不審な点……?」
「あれだけ奥様のためだけに生きていらっしゃった方が、死の間際で奥様に向けた行動をしないというのは……何か引っかかるのです。なにしろ、特別しぶとい方ですから」
「あなたが言うなら、そこの疑問が解消するまでとことん調べてみましょう」
「取り急ぎ、先ほどの上着を調べてみます」
「……お願い」
上着から何かメッセージが出てきたら、私は諦めることができるだろうか。
もう三ヶ月にもなるのに、あなたがこの世にいないなんてとても思えない。
急に「ただいま帰りました! アイリーン!」って家に帰ってくる気がして、ユリシーズがいない毎日の方が、夢なんじゃないかしらって思うのよ。
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