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私は帝都のお城に来て、華やかなパーティに一人だけ喪服で参加している。
今日はヒュー皇子の誕生パーティが行われていた。
皇子殿下から招待状が来た時は、喪中の者を誘うなんて、とは思った。
帝国ではこういった招待状を皇室から受け取ったら、喪服で姿を現してでも来て欲しいという意味になる。
私が場違いになっているのは誘った皇子殿下のせいだ。
オルウィン侯爵夫人とディアリング伯爵夫人が旦那様と一緒に参加していて、「あら、オルブライト伯爵夫人……この度は大変でしたね」と声を掛けられた。
こういう場じゃなかったら何を言われるか分かったものではないけれど、大変だったのは確かだから会釈で返すと、一行は離れた場所に行ってしまった。
やっぱり、同情されるのは苦手だ。
「で? その上着からは何か見つかったの?」
隣にいるクリスティーナに尋ねられる。
「いいえ。特に何も見つかりませんでした。こんなことを四ヶ月も続けていると、みんなが疲れてきているのが分かるのです。手がかりらしいものが何もない状態で、色々なところに行かされて……。でも、やめ時も分からなくなってしまって」
「そう……あれから、アイリーンは一度も泣いていないの?」
クリスティーナに聞かれて、素直にうなずく。
この四ヶ月間、私は涙を流していなかった。
「ずっと長い夢の中にいるようなのです。この世が現実ではないような……。ユリシーズの子を宿していたら、必死に生きなくちゃと思ったかもしれないですね」
「身重は大変よ。新しく住み始めた家で主人をしながら出産だなんて、難しいと思うわ」
「クリスティーナは皇子殿下とどうなのです?」
「お父様の罪が確定してからは、前よりも会話が増えてきているけれど。ねえ、誕生日に呼ばれるくらいなのだから、ヒューから側室の話が出たりしていないの?」
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