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皇帝陛下に会った時に、それっぽいことを言われた。
私はオルブライト家のために皇室との繋がりをちゃんと作っておこうとここに足を運んでいるけれど、側室だなんて全く惹かれない。
「ユリシーズを探したりオルブライト家をまとめる仕事があるので、皇室入りだなんて」
「……わたくしは、アイリーンなら歓迎するわ」
「はい??」
「アイリーンは、一緒にいる人を幸せにできる人。ずっと独り身でいることは無いと思うの。わたくしはアイリーンと一緒にいたいし、ヒューも恐らくそうなのだと思う。わたくしたち、家族になっても良いと思うのよ」
突然のことに、クリスティーナはどうしてしまったのかしらと思う。
「もうわたくし、見ていられないわ。アイリーンが頑張りすぎていて、オルブライト伯爵のところに行こうとしているようにしか見えないの」
クリスティーナに言われてハッとした。
そういう気持ちが無かったかと言えば嘘になる。
「でも、ユリシーズは夢にすら現れてくれないのです」
「……アイリーン」
「あの人は、亡くなったら毎晩でも私の枕元に立つような人だと思ったのに。どこに行ってしまったのか分からなくて、諦めがつきません」
あんなに私に執着していたくせに、突然いなくなってしまったなんて理解ができない。死んでいるのなら、化けて出てきてくれたっていいのに。
「諦めがつかない、ね。それなら、これからも気軽に訪ねてきて。そして、気持ちが変わって皇室に入る決心ができたら遠慮しないで教えて欲しいの」
「クリスティーナの気持ちは本当に嬉しいです。でも、私は皇室には入りません」
「……わたくしは待っているわ」
気持ちが変わる、か……。
それは、私がユリシーズの死を認めるということなのか、それとも、伯爵夫人としてこれ以上は頑張れないと結論を出すということなのだろうか。
「ありがとうございます。でも私、オルブライト家が好きなので」
人狼たちを守るのも私の役目。
ユリシーズの遺したものは全部、私が大切にしていきたい。
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