手がかりを探して

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会場は皇子殿下の謁見の間を使っていて、使用人がトレイを持ってフィンガーフードやドリンクを配っていた。ところどころに甲冑を着た兵士が護衛のために立っているけれど、こういう場での警備って何をするのかしら? そんな風に会場を見回していたら、一人で来ているらしい男性と目が合い、ウィンクを飛ばされた。 「未亡人に色目を使う方って、どうなのかしら」 私がクリスティーナにだけ聞こえる声で言うと、「アイリーンの美貌に抗えないのね。喪服が美人を引き立てて背徳的なのもよくないわ」とクリスティーナは私の恰好を眺める。 ウィンクをしてきたどこぞの貴族らしい男性は、そのままこちらに向かってきた。 「はじめまして。もしや、オルブライト伯爵夫人では?」 「……はあ」 明らかに嫌そうな顔を浮かべてみる。目の前の男はカールのかかった髪を揺らしながら、私を興味深く見つめていた。喪服でお酒を飲んでいるのが急に後ろめたくなってきて視線が泳ぐ。 「お噂はかねがね」 そう言って男性は黒いグローブをはめた私の手を取り、甲に口づけた。 挨拶だと分かっていても、男の人に触れられるのは布越しだろうと本当に嫌。 「噂ですか。わたくしが稀代の悪女だと?」 握られている手を思い切り引いて男性の手から逃げる。 「このようなところにいらっしゃるということは、次のオルブライト伯爵を探しに来たのですか?」 逃げたと思ったのに腰を抱かれた。 「ちょっと、何をっ」 抵抗しても身体が逃れられない。男性は私の飲みかけだった果実酒を奪い、一気に飲み干した。 クリスティーナもあっけに取られているし、こんなところを周りに見られたらまた変な噂が立つ……。 困っていると、目の前に何かが横切った。
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