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「アイリーン、あなた、無差別に男性を魅了しているわね」
後ろからクリスティーナの小声が私を責める。
暫く誰にも使っていなかった私の「微笑み」には、それなりに効き目があるらしい。
「好きな人を相手にしないと、魅了なんて空しいだけです」
「そうね。喪が明けたら好きな人を魅了するのがいいわ」
「好きな人……」
そう言われても、ユリシーズ以外に思い浮かばない。
ユリシーズに対しては、微笑みを向けて反応を楽しんでいたのよね。
ディエスは「ああ、アイリーン!! 好きです!」と言って興奮しながら抱きついてくるか、失神してしまうこともあった。ノクスは「お前……さては、誘っているな?」と言いながら私を抱きしめて頬をスリスリとこすりつけて来て、その後でうっとりとしてくれる。
昼と夜で反応が違うのは面白かったな、なんて、まるで懐かしい思い出みたいだ。ユリシーズと過ごしたことが、過去の出来事になっていく。
これから両親と裁判をすることになるはずだけれど、どうして大好きな人を失った私から、金銭を奪おうとするのかしら。
お父様やお母様には、愛も情も存在しないのかもしれない。
だから、ユリシーズを失ってしまった私のことも、遺産を継いでお金を得たようにしか見えないのだわ。
なんて……可哀想な人たち。
「クリスティーナ……私、ようやく実の両親と戦う決意ができました」
「偉いわ……。どんな些細なことでもわたくしやヒューを頼ってね」
「はい。では、もし両親からたかられるようなことが起きたら……またこちらに来てクリスティーナに慰めてもらいます」
両親は、オルブライト家の財産を使い果たすことでも計画しているのだろう。
ここで退けておかないと、恐らく一生つきまとわれてしまう。
人狼のみんなを守るためにも、裁判には負けられない。
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