過去との決別を誓う

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 *** 私の両親がオルブライト領に来たのは、程なくしてからだった。 エイミーが慌てて私のところにやってきて「クライトン子爵が!」と息を切らしていて、とうとう来たかと覚悟を決める。 話が通じない人と対峙するのはここ数カ月で耐性ができたけれど、相手が実の両親となると自信がない。もう生存権を握られているわけではないというのに、これまでの虐待の痕は私の身体に刻まれたままだ。 「バートレットと一緒に行くわ」 「はい……」 エイミーは私があの人たちを恐れていたのを知っている。だから、こんなに心配そうな顔をしているのだろう。 バートレットを連れて応接室に入ると、よく知った二人がこちらを見て満面の笑みを浮かべた。シンシアがそんな二人にお茶を出している。 今まで向けられたことのない表情に、思わず怯んでしまった。 「オルブライト領は随分豊かなところじゃないの!」 お母様が、嬉しそうに言った。 「死神伯なんていうから、どんな辺鄙なところかと思ったら……伯爵領というだけはある」 お父様は満足げにうなずいていた。私が何も言い返せないのを見たバートレットが「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をしている。 「さすが、わたくしたちのアイリーンね。こんなところで現在は領主の代わりをしているんでしょう?」 お母様がにっこりと笑う度、脳裏にあの顔で鞭を振るった姿が浮かんだ。 背中にぞわりとした寒気が襲う。 「いやあ、私はこの通り足が不自由だからな。こんな豊かなところで暮らせたら最高だなあ、アイリーン」 「……」 何を言っているのですか、と返そうと思ったのに、声が全く出ない。
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