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お城の中にある裁判所は、オルブライト家の食堂が3つ分くらい入る大きさがある。
2階建てで、2階には1列に10人ほど座れそうな席が2列、傍聴席として設けられていた。原告と被告が座る席は1階だから、傍聴席からは全てが見渡せるようになっている。
クリスティーナは2階に向かって歩いて行き、私は原告と被告が座る席である一番前の列に向かう。訴える側が訴えられる側と横並びで座るのか、と両親の姿を捉えながら思った。
両親は、こちらをチラリと見ただけで表情も動かさずに前を向く。
私の座る席の後ろが弁護士の席だ。
弁護を務めてくれるのはバートレットで、バートレットの補佐兼証人としてシンシアと皇室の弁護士が横に座っていた。
弁護士を探さなくちゃとバートレットに伝えた時、「ではわたくしめが」と名乗り出た時には大層驚いたのだけれど、バートレットはもともとオルブライト家の法務を担当するためユリシーズのお父様の援助で法律を勉強し、弁護士の資格を持っているのだという。
なんだかバートレットの底が知れない。
つくづく有能な人ね、といつも通りのポーカーフェイスを見て勇気が湧く。
バートレットが座る弁護士席の前の列、原告の席に着くと、後ろから「奥様、右と左にひとつずつ見えている演説台ような場所が、それぞれ原告側と被告側の証言台です」と小声が聞こえる。
「じゃあ、私たちは向かって左側の証言台を使って主張をするの?」
「さようでございます。弁護人が最初に証言台に向かい、弁護人同士で訴状の確認と主張をします。その後、それぞれの主張に合わせて裁判官が被告や原告を呼びますので、呼ばれた者が証言台に立って話します。どなたかの主張が途中でも、弁護人は弁護する内容があれば席からでも口を挟むことができますので、ところどころで助け船は出せるかと」
「えっ? バートレット、そんなに話せるの? 大丈夫??」
「……まさかそんなことを心配されるとは思いませんでした」
バートレットが私の方を見ながら頭が痛そうにしている。
だって、バートレットって積極的に喋る印象がない。
カン! と小槌の音が裁判所に響いた。
「静粛に。これから裁判を始めます。原告代理人と被告代理人は証言台へ進んでください」
小槌で音を立てたのは皇子殿下で、声を上げたのはヒュー皇子の隣に座っている人だった。
私たちの席からは後ろ側に当たる檀上に裁判官の席があり、中央は裁判長を務めるヒュー皇子の席。
裁判官たちは全員黒いローブを羽織っている。中央に座るヒュー皇子だけが赤いローブ姿だ。
バートレットとお父様の弁護士が席を立ち、それぞれの証言台に立つ。証言台は向かい合っていて、お互いを見ながら発言するような作りだ。
「それでは、原告側より訴状を読み上げてください」
バートレットが手元の書類を腰辺りに掲げた。
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