裁判

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バートレットは原告側の証言台で、手元の訴状を読み上げ始める。 「訴状――原告、アイリーン・オルブライトは、クライトン子爵と子爵夫人に対し親権放棄を申し立て、今後の接触を絶っていただくように望みます」 バートレットの低く澄んだ声が響く。 「それでは、被告側は答弁書を読み上げてください」 裁判官がバートレットの発言を受けて、お父様側の弁護士を促した。 「答弁書――アイリーン・オルブライトは、成人になるまでクライトン子爵家で育ち、オルブライト伯爵家に婚姻という形で入りました。これはクライトン家が皇帝陛下から命を受けたためです。クライトン家なくして現在のアイリーン・オルブライトはあり得ません。申し立ては生み育てた親として受け入れがたいものです」 まあ、想像していた通りの主張ね。バートレットも全く動揺していない。 「それぞれの主張が合意に至らないようですので、原告から訴状の背景を述べてください」 「はい。アイリーン・オルブライトはクライトン家から政略結婚という形で婚姻に至ったように思われますが、その際にクライトン子爵と皇帝陛下の間で人身売買に近い契約が交わされています。帝国法の中では違法には当たりませんが、契約書通りであればクライトン子爵家は親権を放棄したと解釈ができるはずです」 バートレットが契約書の存在を口に出すと、裁判官が「証拠品を確認します」と声を上げた。 裁判官の助手らしい方がバートレットから契約書を受け取り、裁判官の席に持っていく。皇子殿下が最初に契約書に目を通して、隣に渡した。 「この内容の通りであれば、クライトン子爵家はアイリーン・オルブライトの身柄を売り、皇帝の意思でオルブライト家との縁組が成立したことになる。ところで、この契約書はどこから借りたものだ?」 ヒュー王子殿下の質問に、バートレットが「はい、皇帝陛下でございます」と答えた。 お父様側の弁護士が顔を歪ませる。私が皇帝陛下から書類の元本を借りてくるとは思わなかったのだろう。
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