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傍聴席に座っているクリスティーナは、顔の前で手を組んで祈っている。
「被告の主張について、原告側はどうお考えでしょうか?」
裁判官にこちらの意見を求められた。感情論でこられると、バートレットは弱い。私が何か反論しなくちゃ。
「はい」
自分の席で挙手をする。裁判官に促されて証言台に向かうと、バートレットは席に戻っていった。向かいの証言台にはお父様が立っている。
「クライトン子爵から、親子が会うことの問題を聞かれましたのでお答えします。先日、あなたがたが私の家に来て私にしたことをこの場で話してください」
「アイリーン、この間は未亡人になってしまったお前が不自由をしていないか確認に行っただけではないか」
お父様は、悪びれもせずに言い切った。
「それならば、私に杖を振り上げる必要はなかったのでは?」
「杖を振り上げただけだ」
「子爵夫人には熱いお茶をかけられました」
「いやあねえ、手が滑ったのよ」
お母様も同じスタンスらしい。しらばっくれている両親の余裕さを見て、証拠がないと証明がしづらいのねとため息が漏れる。
「証人として、我が家の使用人であるシンシアを連れてきています。裁判長、彼女の証言を認めてください」
「裁判長、証人はオルブライト家の使用人です。主人のためなら嘘の証言でも平気ですると思うのですが」
被告の弁護士席で、お父様の弁護士が声を上げた。
この程度は想像の範疇だったけれど、実の両親ながらふてぶてしくて、よくもまあとむかむかしてくるわ。
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