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「原告側から何か証拠があれば提出をしてください」
裁判官が言った。私がバートレットを見ると、何故かバートレットがうなずいている。……いや、どういう意味よ?
訳が分からずに小首を傾げると、裁判所の隅にいたらしい甲冑の兵士がバートレットの方に何かの書類を持って来る。
バートレットは兵士から書類の束を受け取り、それらをパラパラとめくった。
「ここにあるのは、クライトン子爵が原告を以前婚約させたときの書類と……数々の借用書、借金の記録です」
バートレットが言ったとき、お父様が「何?!」と動揺して大声を上げた。
これまで準備してきた内容とは違う展開が来て、私からも変な声が出るところだった。
「この契約書によりますと、以前も多額のお金を受け取ることで原告の婚姻を決めていたことが分かります。よくもこの金額を受け取る約束が取り付けられたものだと思いますが……」
「言っておくが、その婚姻は相手が亡くなり反故になっているものだ」
お父様は面倒くさそうに言った。
「皇帝陛下との契約で取り付けた金額もかなりのものでしたが……どうやら一度に受け取ることをお望みだったようですね」
「……」
「ここに、やりとりの履歴が残っております。当初は婚姻時に50%、婚姻後に新婦が1年間妻の務めを果たせられれば50%、といったものを交渉で持ちかけられておりますが、金額を下げても一括で受け取ることをお望みだった様子……」
バートレットが興味深く書類を読みながら言うと、お父様は「何が言いたいのでしょうか」と顔を歪ませる。
その時、バートレットの元に書類を運んだ兵士が、証人席の並びに立って手を挙げた。
そういえば、あの兵士はなぜ書類を持ってきたのかしら。
これも、皇子殿下の配慮ってこと??
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