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<2・手札事故とご相談。>
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……」
招来学園一年D組、倉持香帆は唸っていた。教室の自分の席で、己のスマホを睨みつけながら。
「こ、ここからどうやって挽回すれば……!?」
香帆が最近始めたアプリ。それは、ギネス記録も持っているかの世界的有名なカードゲーム“決闘王”をアプリで遊べるというものだった。幼馴染の時枝聖が面白いというので、香帆も始めてみたのである。元々、決闘王の原作はマンガでアニメも放送されているのだ。アニメの方は見ていたし、カードゲームにも興味はあった。ルールがわかればもっと面白く見られるだろうになぁ、と思うくらいには。
で、アプリをスマホに落として遊んでみたら、思いがけず初心者に親切な仕様でわかりやすく、かつデッキを組むのに必要なカードも集めやすかったのでハマってしまったのである。こうして、休み時間にひそかに対人戦を楽しむくらいには。
まったく、便利な世の中になったものだ。アプリを入れたスマホがあれば、その場で世界中のゲーマーと対戦ができるのだから。今香帆が戦っている相手も、ニュージーランドの人だと表示が出ていた。一体、国内発祥のこのゲームはどれほどの数の国に浸透しているのだろうか。
まあ、それはいいとして。
お察しの通り、香帆は現在完全に手詰まりで困っている状況である。
理由は簡単、盛大な手札事故を起こしたせいだ。むしろ、モンスターカードが一枚も手元に来なかった状況でよく一ターン目を凌げたものである。
――え、永続魔法使う?それでモンスターはサーチできるけど……で、でもダブル召喚できるほどの手札は揃わないし!
何故、自分の手元には緑色の魔法カードしか来なかったんだと腐りたい。おかしい、三十枚のデッキに魔法カードは五枚しか入ってないはずなのに!どんな確率なのか。
――しかも、ダリア召喚までいけないと次のターンの頭で1000ポイントペナルティダメージ食らうだよなぁぁぁ……!でもって、サーチしたモンスターカードを伏せないと次のターンの相手のダイレクトアタックで確実に死ぬ……え、これもうどうしようもなくない?
対人戦の場合は、制限時間が設けられている。こうしている間にもみるみるうちに右側に表示された数字が減っている。焦れば焦るほど思考は回らない。いい加減、ブロンズランクくらいには行きたいというのに、これではまたノーマルランクで足止めではないか。
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