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聖はすでにキングランクにいる。せっかく共通の趣味を見つけたのだから、彼とまともに対戦できるくらいには強くなりたいのだが。
「おのれ手札事故、呪うてやる……地獄の果まで呪うてやるぞ……うぐぐぐぐぐ」
「か、香帆ちゃーん?」
腹の底から響くような声で呪詛を呟いていると、ふと後ろから声がかかった。友人の声だと気付いたが、すぐには振り返らない。振り返っている場合ではない。
「夏美、邪魔をしないで!崇高なる決闘者の邪魔をする人間は祟られて死ぬと相場が決まってんだよ……!」
「こここここ怖いんですけど!?も、戻ってきて!?」
ひっくり返った声を上げたのは、同じクラスの友人で水泳部所属の西夏美である。彼女は香帆の手元を覗き込むと、あー、と残念そうな声を上げた。
「香帆ちゃん、諦めて。その状況はどうにもなんないわ。相手に悪いからさっさとサレンダーしよ、ね」
「ああ、ちょ、ちょっとお!?」
友人は横から手を伸ばしてくると、さっさと降参のボタンを押してしまった。香帆は涙目になる。いくらなんでもあんまりだ。そういえば友人も同じゲームを嗜んでいると聞いたことはあるが。
「夏美ぃ……まだ挽回できたかもしれないのにぃ」
「初心者は引き際もわかんないって本当にその通りなのね。フィールドがら空き、墓地にもカードない時点でシーツーデッキは回らないから。諦めて諦めて。今度もうちょっと良いデッキの構築の仕方教えてあげるから」
「うううう……」
「で、そんなことよりもさ」
しょぼんぬ、と肩を落とす香帆に。夏美は真剣な顔になって言うのだった。
「あんたにちょっと相談したいことがあって。……ホラーとか、オカルトとか。あんた達、そういうの詳しいでしょ」
「え」
身近な人間から、その手の単語が出るとろくなことがない。香帆は苦々しい気持ちで顔を上げた。
この招来学園は、特別な場所として知られている。この学校では無闇矢鱈と七不思議をはじめとした怪談を調べてはいけないし、それを調べようとする人間は当然のように邪魔が入る仕組みになっている。以前、香帆が兼部している新聞部も、七不思議を調べて記事にしようとしたら学校側からストップが入ったほどなのだ。
それは、この学校の特殊なシステムに起因している。
新聞部と一緒に、オカルト研究会に入っている(入らされたとも言う)香帆は、その理由を嫌というほど知っているのだった。
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