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悪いものを引き寄せやすい立地と構造。特殊な七不思議という餌を撒いたこの学校が。
奴らがあっちこっちから攻めてくるのを防ぐために、わざと侵入しやすいルートを作って待ち伏せし、入ってきた奴らを片っ端から撃退する。そのための特殊部隊が、この学校には存在するのだ。
それが、オカルト研究会。
そして、香帆の幼馴染である時枝清が所属する一年E組。
彼らはその特殊な能力を見込まれ、ゴーストバスターの尖兵として日々特殊な訓練をしている。元々D組の香帆は、ある事件をきっかけに特殊能力が目覚めてしまい、オカルト研究会に入れられてしまったというクチなのだが。
「相談って、なに?」
とはいえ、そんな話は一般の生徒は誰も知らない。自分たちが、侵略者を誘き寄せるための囮のようなものなんて教えるわけにはいかないからだ。
まあ、目の前の夏美は、前に事件に巻き込まれてしまった関係で多少の事情を知られることになってしまったが。未だに、彼女の目の前で“侵略者”というキーワードを口にしてしまったことは、最大の誤算のひとつだったと思っている。
今のところ、夏美が知っているのは“学校では本物の怪異が起きることがあって、香帆たちオカルト研究回”所属メンバーにはその解決策がある、ということだけであるはずである。
「うん、その、なんていうかさ……最近ちょっと気になる話を聞いちゃって」
夏美は困ったように笑いながら言った。
「学校のオバケ?かなんかが関係してるかもしれないから、なんとかできるかなって思って。あたし、嫌なのよ。水泳部の時みたいに……部長や粉子ちゃんみたいなことになるのは。学校の怪談ってやつがきっかけで、前回の事件は起きたでしょ」
「あー……うん」
夏休み前の事件を思い出して、香帆は苦い気持ちになった。侵略者との戦いに、この学校の生徒たちは否応なしに巻き込まれていく運命にある。夏休み前には、夏美と夏美が所属する水泳部がその渦中にあったのだ。複数の負傷者を出す惨事となったあの事件。危うく、聖や同じオカルト研究会に所属する玲音といった仲間たちも死にかけた。夏美としても、トラウマになっていてもなんらおかしくはあるまい。
「学校のオバケが関係してるって、どういうこと?七不思議にまつわる事件に、誰か巻き込まれたの?」
香帆はなるべく優しい声を作って夏美に尋ねる。今のところ、オカルト研究会の顧問である千葉先生からも特に何も言われていない。新しく侵略者に動きがあったらしいとか、対策を始めようなんて話は聞いていないが。
「七不思議絡みかは、わからないんだけど」
夏美は普段の元気な彼女らしからぬ、遠慮がちな口調で言ったのである。
「ユーチューバーの人達が調べてる都市伝説があって。それが、うちの学校に関係してるかもしれないの。“なんでも願いを叶えてもらえる迷宮”って話なんだけど」
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