<3・迷宮に誘われた者達。>

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<3・迷宮に誘われた者達。>

 この学校の七不思議は、ただの怪談ではない。  何故なら、“侵略者が侵入してきやすいように”意図的に作られた怪談だからだ。ただし、人間がその内容をコントロールできるというわけではないのが微妙である。どういう仕組みになっているか香帆もよくわかっていないのだが、自分たちオカルト研究会のメンバーが怪談のどれか(正確には怪談に擬態した侵略者)を倒すと、その怪談が消滅して別の怪談がいつの間にか発生するという仕組みになっているらしい。  現在の怪談は、以下の通り。  第一の七不思議、“プールに潜む手。”  第二の七不思議、“押しつぶしの体育倉庫。”  第三の七不思議、“花壇に残る足跡。”  第四の七不思議、“理科室の召喚。”  第五の七不思議、“呪われたWEBサイトへの入口。”  第六の七不思議、“出口のない階段。”  第七の七不思議、“屋上で招くカナコさん。”  このうちのいくつかは、既に何度か入れ替わっている。しかも、そのことにオカルト研究会や事件にかかわった者以外誰も気づかないという仕組み。この学校では、新しく怪談が生まれ、そこから侵略者が侵入してくるたびに撃退することによって、なんとかこの国の平和を守ってきた背景があるのだ。  夏休み前に、夏美たち水泳部のメンバーを騒動に巻き込んだのがこのうちの第三の七不思議――であった“焼却炉から覗く目”という怪談だった。今は、花壇に残る足跡、という怪談に変更されている。この焼却炉から覗く目という怪談は、平たく言うと焼却炉に潜んでいる侵略者の力を使って、自分の願いを叶えてもらおうとした生徒がいたことに起因するものだった。  侵略者は基本的にこの地球の人間に敵対的ではあるが、性質上“怪談として伝えられている内容から大きく逸脱した行動はできない”ことがほとんどだ。焼却炉から覗く目、に悪意を持った人間がお願い事をすることで活性化してしまったという、なんとも悲しい事例だった。  侵略者は、確かに恐ろしい存在である。しかし、ある意味ではそれを利用しようとする人間の方が恐ろしい時もあるのだ。香帆たちはもちろん、夏美もそれは嫌というほど思い知ったことだろう。 「願いを叶えてもらえる迷宮?なんか、Twitterでそんなこと話してる人を見たことがあるような、ないような」  夏美の言葉に、首を傾げる香帆。 「あんまり詳しく知らないけどね。なんか、何でも願いを叶えてくれるなんてうらやましー!とかなんとか言ってる人は見かけるけど、実際にどういう怪談なのか全然情報が出てこないし。なんていうか、都合のいい都市伝説があるもんだなーくらいにしか思ってなかったな」
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