学校へ行く意味

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 竜則は小学校5年生。小学校が大嫌いで、小学校に行こうとしない。学校なんて、行く意味がない、勉強なんて意味がないと思っている。好きな事ができればそれでいいと思っているだけだ。  両親はそんな竜則を心配しているが、竜則はとても反抗的で、両親も怯えているという。先生も心配しているが、なかなか小学校に来ようとしない。来ようとしても、何らかの言い訳をして小学校を休むばかりだ。 「学校なんて行きたくないなー」  竜則は家の近くの川辺にいた。誰にも邪魔されず、ここでのんびりするのが大好きだ。できればこんな日々を送りたいな。 「いい天気だなー」  今日はいい天気で、ポカポカ陽気だ。青い空を雲が流れていく。とてものどか1日だ。このまま今日もこんな日々が続けばいいのに。  竜則は眠たくなってきた。いい天気だから、うとうとしてしまうんだろう。竜則はいつのまにか寝てしまった。それから先の事はあまり覚えていない。  竜則が目を覚ますと、そこは工場だ。人々が忙しく作業をしている。まだ子供なのに、どうして自分がここに来たんだろう。 「ん? ここは?」  竜則は状況が全くつかめない。竜則は首をかしげた。 「工場?」  と、1人の老人がやって来た。ここの従業員のようで、作業着を着ている。竜則は全くそれに気づいていない。 「おいおい、ここで何をやっている、働けよ!」 「えっ!?」  竜則は振り返った。そこには老人がいる。ここの従業員のようだ。僕が仕事? それはまだなのに、どうして? 僕はまだ小学生だよ。 「ボーとしてるんじゃないよ! 働けよ!」  老人はは働けと言っている。両親よりもはるかに怖い。これは従わなければならない。 「ど、どうやって」  と、老人は1束の工程管理書を渡した。そこにはまだ自分がわからない事がたくさん載っている。竜則は呆然としている。 「これを切断して」  竜則は開いた口が塞がらない。切断なんて、あまりやった事がない。学校で習うらしいけど、そんなの就職してから習うものだと思っていた。 「は、はい・・・」  竜則は戸惑いつつも作業をする事になった。だが、機械なんて触った事がない。本当にできるんだろうか? 不安だらけだ。だけど、やらなければ。  竜則は機械の操作を始めた。だが、全くわからない。適当にボタンを押したが、操作を誤ってしまった。すると、従業員がみんなやって来た。ミスを犯したのに気づいたようだ。 「何をやっているんだ! 違うぞ!」  そこにやって来たのは、太い腕っぷしのいかにも強そうな人だ。竜則は焦っている。ミスを犯してしまったからだ。学校で習っていたら、そんなにミスをしなかったのかな? 「す、すいません・・・」  そこに、社長がやって来た。まさか、社長が来るとは。これは大きな事態だ。 「学校を何を学んできたんだ!」 「そ、それは・・・」  竜則は何も言えなかった。学校にあまり行っていなかったがために、何も答えられない。 「何か言えよ!」  社長は怒鳴っている。社長も口調が荒い。工場って、こんな所なのかな? こうならないためにも、学校に行くべきだな。 「な、何も言えません・・・」 「お前は役立たずだな!」  竜則は呆然となっている。従業員も社長も、みんな竜則を睨んでいる。竜則は泣きそうになった。もしも、学校に行っていれば、こんな事にならなかったかもしれないのに。  と、竜則は目を覚ました。目が覚めると、そこは小学校の保健室だ。どうやら夢から覚めたようだ。 「大丈夫?」  竜則は右を振り向いた。そこには担任の先生がいる。担任の先生は、優しい目で竜則を見つめている。 「えっ、ここは?」  竜則には、何があったのか理解できない。川辺て寝ていたら、工場で働く夢を見て、気づいたら保健室のベッドで寝ていた。 「川辺で寝てたから先生が連れてきたんだよ。うなされてたけど、何があったの?」  担任の先生は川辺で寝てからの出来事を詳しく話した。まさか、こんな事があったとは。そして、夢にうなされていたとは。竜則は恥ずかしくなった。そして、どうして学校に行かなかったんだろうと思った。 「仕事をする夢を見てた。言った事をできなくて、怒られて」 「そうならないために、学校はあるのよ」  今さっきの夢でわかった。将来、自分が就職しても失敗しないために、これからの自分の人生を切り開くために、学校はあるのだ。 「今さっき、夢を見てそう思った。ずる休みばっかりして、ごめんなさい。これからは学校に行くから」  竜則は反省した。これからは学校に行くから、許してくれ。許してくれないかもしれない。だけど、謝ってみよう。 「わかってくれたら、それでいいよ」  だが、担任の先生は素直に受け入れた。だが、それも今の内だろう。将来、就職するようになると、そんな事は許されないだろう。仕事の世界はそんなものじゃない。もっと厳しいはずだ。それに備えるために、学校はあるのだ。今日からでもいい。積極的に学校に行って、勉強をしなければ。
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