【序章】第1話:戴聖式にて前世を思い出す

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 時々、夢を見ていた。どこか知らない場所の夢。周りには人がいっぱいいて、次から次にその人達が私の描いた本を満面の笑みで求めてくる不思議な夢。  ……あぁ、思い出した。あれは私の前世の記憶……。  私が最も輝けた場所。自分の性癖と妄想を思う存分消費できた上に、他の人達の妄想もおすそ分けしてもらえた同人即売会(てんごく)……。  そうよ、私は推しの薄い本を描いていた。三日徹夜で。その疲労のままお風呂に入って、溺れて死んだんだわ!  なんてこと! あの渾身の新刊を世に出さないまま、死ぬなんて……。  いえ、それはもうどうにもならないこと。仕方ないことなのよ。  それよりも問題なのは──今世の私について。新しい私の名前はディア・ムーン・ヴィエルジュ。その名前には聞き覚えがあるの。  そう、私は気づいてしまった。  ディア・ムーン・ヴィエルジュは前世で死ぬ直前までハマっていたRPG乙女ゲーム──「黎明のリュミエール~聖女と太陽の王子~」に登場する“恋敵”役の傲慢我儘令嬢だってことに──。
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