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最近、妹の様子がおかしい。
従者達が次々と「戴聖式以来、ディア様が別人のようになった」と言う。近々それを確かめるつもりだったが、その前に向こうからやってきた。
リオンはディアが去った後のドアをじっと見つめ、彼女の変化について考えていた。どうやら従者達の言葉はあながち間違いでもないようだ。
戴聖式でディアが守護魔法を授かったと聞いた時はリオン自身、耳を疑った。
戴聖式で何かあったのだろうか。それとも本来のディアが顔を出しただけなのだろうか。しかしそれならば敢えて傲慢我儘令嬢を演じる意図が分からない。
「まぁ、あの妹がそう簡単に改心するはずもない。守護魔法を与えられたのも、神の悪戯だろう。あいつが他人を守ろうなんて思うはずがない。それにあいつは森へ行く勇気も根性も持ち合わせてはいないさ」
……しかし妙に引っかかる。先程のディアの強い瞳に惹かれる自分がいるのも確かだった。
「ちっ。万が一、あいつが森に行ったとしても魔花は魔物の死骸や巣に近い場所にしか咲かない。ネアンの森が弱いモンスターしかいないとしても、今のあいつが勝てる相手ではない。おそらく死ぬだろう」
誰に聞かせることもない独り言。リオンはらしくもなく狼狽えている自分に苛立つ。
「──最悪ディアが死んでも、一家の恥が消えただけだ。どうせ俺には心から家族と思える人間なんてもうこの世には居ない。俺は、もう二度と“大切な人”を作らないと決めたのだから」
(そう。だから、これでいいんだ。俺には関係ない。これで、いいんだ……)
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