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彼は人を疑うことが苦手で、多少損を被っても受け流してしまう性格上その世間知らずでお人好しな性が改善する機会はほとんどなかった。それが今回盛大に悪い方向で働いてしまうことになる。
何時ものようにダンジョンへ向かおうとするエルトに一組のパーティーが声を掛ける。バランスの良い編成を組んだその男女は少し難易度の高い階層に向かうから良ければ助太刀をしてくれないかと頼み込む。
人を疑わないエルトは快く頷き、行動を共にすることとなるが彼の心中に疑いは全くない。悪目立ちともいえる注目のされ方を受けたせいか彼にはこの街に友人というものがほとんどなく、ささやかな言葉の応酬、ちょっとした戯れでさえひどく新鮮で尊いものに思えた。パーティーメンバーは皆、心意気の良い者達で普段ソロだったエルトが彼らに背中を預けて戦うようになるまでそう時間は掛からなかった。
澄んだ空に鳥が舞いどこか乾いた風が吹くその日。まさか彼らが自分を嵌めるために行動を共にしているなど、夢に思わずダンジョンへ足を踏み入れた。
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