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頬に一滴の冷たい水が垂れ、白磁の肌を濡らす。その刺激に僅かに身動いたエルトはそのままゆっくりと目蓋を開く。どうやら地べたに直接寝転んだ体勢のようで、肌に伝う湿った冷たさに不快そうに眉を寄せる。僅かにぼやけた視界は薄暗くここがまだ迷宮の中であろうことは簡単に理解できた。しかし、状況の理解が追い付かず回りを見渡して見れば、周囲には誰もおらず自分だけがたった一人だけ。何があったかはよく分からない。
確かいつものパーティーメンバーと休憩がてら軽食を摂って……
そこからの記憶がない。
その実、彼が仲間と共に摂った食事に故意に薬が盛られていたのだが、当の本人はそんな可能性露ほども考えていない。命を預けあった戦友に裏切られるなど想像さえできなかったのだ。
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