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ぼやけた視界に映ったその瞳は濁った黄色ではなくどこか知性を感じる赤色で、魔物にこんなことを思うのは正気とは思えないが、とても綺麗だと思った。そのままぼんやり眺めていたが不意に瞼が落ちてきて、再び眠りについた。
次に目覚めた時も洞窟の中の様子はそう変わらなかった。
相変わらず身体の調子はあまり良くないが、それでも先程よりはかなりマシになっている。
辺りは静寂に包まれていて、聞こえてくるのは自分の荒々しい呼吸音のみ。寝起きだからなのか、身体の節々が酷く痛みを訴える。
何とかしてこの状況を打破しなくては。そう思い身体を動かそうとするが、やはり思うように動かずただ寝返りを打つことしかできない。
「起きたのか?」
突然声をかけられビクッと肩が跳ね上がる。嗄れた聞き取りにくい声ではあったが、確かに言葉として聞き取れるものだった。声の主の方へ顔を向けようとしたが、首を動かすのさえ辛くて断念する。
「まだ動くな。お前、丸三日以上眠っていたぞ」
そんなに長く、と驚きを隠せない。しかし、確かにあれだけの高熱を出していたら当然かもしれないと納得もできた。
「……水」
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