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絞り出した声はひどく掠れていて弱々しく、聞き取ることも容易ではないほどだったのに目の前のオーガはその言葉をきちんと拾い上げたようで、こちらを振り返りその瞳を向ける。
好き勝手に身体を嫐られ、散々な目に合わせたのにも関わらず、今度は甲斐甲斐しくエルトの看病するなどあまりにもあべこべで頭が混乱してくる。
だがよくよく考えれば、ダンジョンでパーティーに置いて行かれた時、あの縛られた状態では下位の魔物であってもエルトは簡単に殺されていただろう。身体こそ嫐られひどい目にあったが今生きてるのはある意味では目の前のこのオーガのおかげでもある。もちろん感謝をするつもりなどは全くないが。
「俺が怖いか?」
問われる質問の意味がわからない。なぜ答えのわかりきった質問を投げかけるのか。怖いと答えたら一体どうなるのだろうか。
___正直に言えば恐ろしい。
今も目の前にいるだけで威圧感が押し寄せ、いつ殺されるのかと喚きたくなる。ここで嘘をつくのは憚られて素直に頷く。
「…………まさか、心まで魔物のようになってしまうとはな。……人というものがこうまで脆いことを、忘れていた。」
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