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こんな子供騙しの言葉が通じるとは思っていなかったため、エルト自身も驚いていた。 「お前が勝手に死ぬことは許さない。お前は俺のものだ。」 何を言っているんだ、このオーガは。そういえばこのオーガはそんなこと言っていたと遅まきながら思い出す。 「……お前は、俺の呪いを解く鍵だ。だから死なせるわけにはいかない。」 全くもって意味が分からず混乱する。そもそもこのオーガは自分を散々痛めつけたのだ。なぜ今更そんなことを言うのだろうか。呪いとは何のことか。ますます疑問は尽きない。 「それに、俺はお前に惚れた。」 「……は?」 オーガの突然の告白に思わず間の抜けた声が出る。この流れでそんなこと言われたとしても素直に信じられるはずがない。 「初めて見た時から美しいと思った。黄金の髪に空色の瞳、白磁の肌。どれも俺にはしばらくなかった色だ。お前が呪いを解くための鍵ならば……これはもう運命としか思えない。」
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