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熱烈な、独りよがりな愛の言葉を囁かれ鳥肌が立つ。この期に及んで一体何を言っているのかと正気を疑いたくなるが、その目は至極真剣そのものでとても嘘をついているようには見えない。しかしエルトには自分に向けられたそれらの感情が愛情であるとはとても思えなかった。むしろ、執着や妄執に近いのではないかとすら感じる。 今まで向けられたことのない感情に恐怖心が沸き上がる。 本能が告げている。 このオーガからは逃げられない、と。 *** それからというもの、オーガは甲斐甲斐しく世話をした。てっきりまた身体を求められるとばかり思っていたが、どうやら回復に専念させてもらえるようで、水浴びに連れて行かれると身体中隅々まで洗い清められ、食事まで用意された。 そんな日々が続きある程度身体が回復してきた頃、オーガはエルトをある場所に連れ出した。 そこは洞窟内の開けた場所であり、薄暗い広い空間。その中心に何かがあるようだった。 近づくにつれて鼻腔をつく強烈な匂いに顔をしかめつつ、その何かの正体に気付く。 そこにあったのは大量の人間の骨。
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