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流石の彼もここまで不安材料が揃うと自分がおかれた危機を正しく認識し始める。まずい、まずい。このままでは確実に死ぬ。魔物が闊歩するダンジョン内で丸腰というだけでもかなり危険な状態であるが、その上両手足を縛られているため移動することも儘ならないのだから、どうしたものかと頭を抱えたくなるのは仕方のないことだろう。どうか魔物に見つかる前に冒険者が見付けてくれますように、と半ば祈りながら必死で縄を解こうと必死になる。
まるで獣の唸り声のような不気味な風の音。岩の天井から水が垂れて落ちる音にさえエルトは肩を揺らす。いつまでも解けない縄をほどくのは諦めて何とか立ち上がろうとするも揃えて縛られた足では不安定ですぐに倒れ込む。もう何度繰り返しただろうか。エルトの服は汗でぐっしょりと濡れ、髪は肌に張り付いて鬱陶しいのに払うことさえ叶わない。
早く早くと焦る気持ちとは対照的に変わらない状況。彼は自分がいるここが迷宮の中でも奥まった場所な上に、魔力を無効化する一帯で、冒険者がほとんど立ち入ることがないということを知らないため、一縷の望みの望みをかけ声の限り助けを呼ぶ。
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