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七月七日 十八番街
スコップランド十八番街。打ち付ける雨が、ベールを降ろしたように深夜の高架下を人目から遠ざけていた。
「さあ。約束の物を渡してもらおう」
「それが……。奪われてしまって」
「なんだと! おまえー」
「まあ、待て」
腕が太く頭の小さな猿顔の部下を止めた男は、約束の物を奪われたと言う落ち着きない男の前に進み出た。
「そうか。奪われたのか」
「そうなんだ。知ってるだろ? 犯人が」
落ち着きのなかった男は、引きつった笑みを浮かべた。
「残念だ。嘘はもう終わりだ」
雨音が銃声を飲み込むと、引きつった笑みを凍らせた男は受け身も取らずに地面に倒れた。
「行くぞ」
「いんですか?」
「警察も手間が省けるだろ」
男達を乗せた車が、方向転換して走り去る。その場に残ったのは、自身の車のヘッドライトに照らされ横たわる男だけだった。
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