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立て籠り
現場に着いていた同じ課の刑事が、ウォーカーを見て駆け寄ってきた。
「状況は?」
「ゴードンが昨夜から行方が知れません。ご夫人はショックで救護班が見ています。犯人からの要求は変わらず。ナイフを所持しています。かなり興奮状態で体力的にも限界かと。狙撃準備整ってます」
「それはダメです!」
「まあ待てバニラ」
ウォーカーが腕を上げバニラを制した。
「リーフ頼めるか」
「はい」
心得たリーフは、すでに無線機を手にしていた。
「警部?」
「リーフは元特殊部隊でな。こういう現場は私らより慣れっこだ。それに犯人は、絶対に話したがっているに違いない」
●
「ローマンさん。ローマンさん」
「ゴードンか!」
扉越しに声をかけたリーフにも、ローマンの疲労が感じとれた。
「警察の者です。窓から離れてください危険です」
「くっそ! もういい!」
「きゃ!」
「ダメですローマンさん、窓から離れて撃たれます」
室内で動く音がした。狙撃された気配はなく、リーフは静かに待った。
「まだ居るのか?」
「はい」
「どうして助けた。あんた警察なんだろ?」
「真実が知りたいからです」
「ゴードンを守ってるのにか?」
よくある誤解だった。有力者と国家権力の癒着。それは警察が庇う程のことをゴードンがやったとローマンが思っている証拠だ。
「本当に連絡が取れないんです。だから、あなたに教えて欲しい。ゴードンに会って、どうしたいのか。レッドノマーは手に入れたんじゃないんですか?」
出来るだけ抑揚をおさえながらリーフは会話を繋いだ。
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