立て籠り

1/3

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

立て籠り

 現場に着いていた同じ課の刑事が、ウォーカーを見て駆け寄ってきた。 「状況は?」 「ゴードンが昨夜から行方が知れません。ご夫人はショックで救護班が見ています。犯人からの要求は変わらず。ナイフを所持しています。かなり興奮状態で体力的にも限界かと。狙撃準備整ってます」 「それはダメです!」 「まあ待てバニラ」  ウォーカーが腕を上げバニラを制した。 「リーフ頼めるか」 「はい」  心得たリーフは、すでに無線機を手にしていた。 「警部?」 「リーフは元特殊部隊(SAS)でな。こういう現場は私らより慣れっこだ。それに犯人は、絶対に話したがっているに違いない」 ● 「ローマンさん。ローマンさん」 「ゴードンか!」  扉越しに声をかけたリーフにも、ローマンの疲労が感じとれた。 「警察の者です。窓から離れてください危険です」 「くっそ! もういい!」 「きゃ!」 「ダメですローマンさん、窓から離れて撃たれます」  室内で動く音がした。狙撃された気配はなく、リーフは静かに待った。 「まだ居るのか?」 「はい」 「どうして助けた。あんた警察なんだろ?」 「真実が知りたいからです」 「ゴードンを守ってるのにか?」  よくある誤解だった。有力者と国家権力の癒着。それは警察が庇う程のことをゴードンがやったとローマンが思っている証拠だ。 「本当に連絡が取れないんです。だから、あなたに教えて欲しい。ゴードンに会って、どうしたいのか。レッドノマー(赤の賢者)は手に入れたんじゃないんですか?」  出来るだけ抑揚をおさえながらリーフは会話を繋いだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加