立て籠り

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「リチャードとゴードンがガインズエリアで深夜たびたび会っているのを目撃されていました。ガインズエリアというのは、その」 「ああ。主に同性愛者が集う場所だな」 「ええ。そこのホテルも二人は利用していたようです」  目を閉じたウォールは、片手で汗を拭きとるように顔全体を撫でた。 「オリビアさん。深呼吸をして、私の話を聞いてください」  バニラはオリビアの前に膝をつくと、その両手を掴み自らも深呼吸をした。オリビアも頷きながら、それに倣った。 「オリビアさん。一週間ほど前。ご主人に変わったところはありませんでしたか? たとえば、いつもと違う行動をとったり。やった事がないことをやってみたり」 「……。たしか。そう。娘と買い物して帰って来た日。庭から戻ってきた彼が服に泥を付けていて。どうしたのか聞いたら、庭いじりをしてたって……嘘。まさか」  なにかを感じ取ったオリビアは、バニラにすがり泣き始めた。まるで否定の言葉を求めるように。 「落ち着いてくださいオリビアさん。警部、ちょっと」  バニラに耳打ちされたウォーカーは、その場を離れると次々と指示を出し始めた。現場がにわかに活気づいた。 ● 「ローマンさん。息子さんが。リチャードが見つかりました」  外が少し騒がしくなり、しばらくしての事だった。 「本当か! 会えるのか!」 「はい。扉を開けてください。僕は武器など持っていません」  両手を広げ扉から数歩下がったリーフの顔には重たい影がさしていた。  
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